この度谷中ホテルでは、坪井あやの2004年Chelsea College of Art卒業制作作品、”The Space between the World and Words”をご紹介いたします。今回は、規模縮小版での展示となります。
私たちは現実をずいぶん強固な揺らぎないものとして捕らえていないでしょうか。もしかしたらこの現実(その多くは味気ない日々)とは常識や世間という言葉で言い表され、共有されている認識であるだけなのかもしれません。渾沌に充ち、捕らえがたく、偶然と奇跡が連続している場所として現実を捕らえ直したとき、そこに見えるのは幼い頃にあこがれたあの冒険譚の世界なのかもしれません。
この作品では、戸棚をゆっくりと開け閉めするモノクロ画像がときおり現れる小さなテレビモニター、デジタルカメラで撮りためられた日々のスナップ写真を本の形にまとめたもの、奇妙に設置されたイスが、ほの暗い、真白い箱のような空間に配置されており、スペース全体に写真が散在しています。ときに佇み、どうぞこのスペースを自由に探索し意味を編んでください。あたりまえはあたりまえではないのかもしれない。現実に戻ったとき、世界がいつもと少し違って見えれば幸いです。
何がどう現実感を生むのか。この”濃さ”は何か。美術、美術体験とは何か。今後も現実感(リアリティ)について、美術という方法で考えていきたいと思います。このスペースでは、その成果を適宜発表していく予定です。